地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(都産技研)は、東京医科大学、福井大学、慶應義塾大学医学部腫瘍センター・低侵襲療法研究開発部門と共同で、進行した胆管ガンや、すい臓ガンの緩和療法として使われる、胆管(胆汁が流れる管)内に埋め込む、世界初の機能を持つ『bcゲーム レーキバック※1』を開発しました。
これにより、bcゲーム レーキバックを長期間用いた緩和療法が可能となり、ガン患者や医療従事者の大幅な負担軽減が期待できます。
※1 bcゲーム レーキバック:体内にある管状の部位に差し込むことで、石や腫瘍の影響により流れが悪くなった胆汁
などの液体を流しやすくするための管状の医療器具
開発のポイント
・従来の金属bcゲーム レーキバック及びプラスチックbcゲーム レーキバック各々の長所(長期利用可能・除去可能)を合わせ持った、今までに無い性質のbcゲーム レーキバックです。
・bcゲーム レーキバックの材料に水分を含むと膨張する素材(PVAハイドロゲル※2)を使用することで、胆汁の流れを確保でき、黄疸の解消に役立ちます。
※2 PVAハイドロゲル:ポリビニルアルコールハイドロゲル
※PVAは、液体のりやスbcゲーム レーキバックムの原料として知られています.
技術解説
水が主成分であるハイドロゲルを素材とした、胆管ドレナージ用自己拡張型bcゲーム レーキバックを世界に先駆けて開発しました。今回開発したbcゲーム レーキバックは実験にて、豚胆管を拡張できることが確認できました。我が国発の新規のbcゲーム レーキバックとなるばかりでなく、bcゲーム レーキバック留置が必要な患者、医療従事者の皆さまの大幅な負担軽減が期待できます。
「胆管ドレナージ用自己拡張型bcゲーム レーキバック」の概要
bcゲーム レーキバックとは、ヒトの身体の管(血管や消化管など)を内側から広げるために用いられる筒状の医療機器であり、本開発品は胆管に適用するものです。すい臓ガンなどによって胆管が閉塞してしまうと、胆汁が排出されなくなることにより⻩疸が発症します。⻩疸には発熱や悪⼼などが併発するため、bcゲーム レーキバックを胆管に内視鏡的に留置して胆汁を排出する緩和療法が⾏われます。
プラスチックbcゲーム レーキバックおよび⾦属bcゲーム レーキバックが主に用いられています。プラスチックbcゲーム レーキバックは抜去可能であるものの早期に詰まってしまいます。⾦属bcゲーム レーキバックは内腔が広く⻑期開存性を示しますが、網目からの癌の浸潤により抜去できない、という課題を抱えています。これらのbcゲーム レーキバックの⻑所を両⽴した「⻑期開存性を示し抜去可能」な新たなbcゲーム レーキバックの開発が待望されていました。
新たなbcゲーム レーキバックの素材として、都産技研はポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルに着目しました。PVAは生体に安全な素材であり、頑丈なハイドロゲルを作製可能です。PVAハイドロゲルを用いて作製した胆管bcゲーム レーキバック試作品は豚胆管を拡張可能であることを明らかにしました。現⾏bcゲーム レーキバックの⻑所を両⽴した新たなbcゲーム レーキバックとしての可能性が期待されます。
開発品の外観と内腔拡大の概念図(画像2)
乾燥状態で内視鏡的に胆管に送達されます。胆管留置後は胆汁などの体液による膨潤により自己拡張し、内腔が拡大します。膨潤後の内径(約5mm)は市販品のプラスチックbcゲーム レーキバックの内径(最大3.3mm)を超えており⻑期開存性が期待されます。
今後の展開
• 既存bcゲーム レーキバックとの優位性の比較、および更なる材料の改良を進めています。
• 都産技研では本開発に関わる中小企業との共同研究を広く募集しています。
都産技研では、保有する技術シーズや技術情報など、中小企業の製品開発や生産活動に役⽴つ情報を発信しています。
論文誌名:Journal of Materials Chemistry B
掲載日:2022年6月8日
論文タイトル:Characterization and preliminary in vivo evaluation of a self-expandable hydrogel stent with anisotropic swelling behavior and endoscopic deliverability for use in biliary drainage
DOI:https://doi.org/10.1039/D2TB00104G