1 概要
東京都立大学、産業技術総合研究所、筑波大学、東北大学、名古屋大学、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学らの研究チーム(構成員及びその所属は以下「研究チーム構成員」のとおり)は、次世代の半導体材料として注目されている遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)(注1)の単層シートを利用し、最小内径5 nm程度のナノサイズの巻物(スクロール)状構造の作製に成功しました。TMDは遷移金属原子がカルコゲン原子に挟まれた3原子厚のシート状物質であり、その機能や応用が近年注目を集めています。一般に、TMDは平坦な構造が安定であり、円筒などの曲がった構造は不安定な状態となります。本研究では、上部と下部のカルコゲン原子の種類を変えたヤヌス構造と呼ばれるTMDを作製し、この非対称な構造がスクロール化を促進することを見出しました。理論計算との比較より、最小内径が5 nm程度まで安定な構造となることを確認しました。また、bcゲーム 入金ボーナスて軸に平行な偏光を持つ光を照射したときに発光や光散乱の強度が増大すること、表面の電気的な特性がセレン側と硫黄側で異なること、及びスクロール構造が水素発生特性を有するなどの基礎的性質を明らかにしました。
今回得られた研究成果は、平坦な二次元シート材料を円筒状の巻物bcゲーム 入金ボーナスに変形する新たな手法を提案するものであり、ナノbcゲーム 入金ボーナスと物性の相関関係の解明、そしてTMDの触媒特性や光電変換特性などの機能の高性能化に向けた基盤技術となることが期待されます。
本bcゲーム 入金ボーナス成果は、2024年1月17日(米国東部時間)付けでアメリカ化学会が発行する英文誌『ACS Nano』にて発表されました。
【bcゲーム 入金ボーナスチーム構成員】
・東京都立大学理学bcゲーム 入金ボーナス科物理学専攻 金田賢彦(大学院生)、張文金特任助教、中西勇介助教、小川朋也(大学院生)、橋本和樹(大学院生)、遠藤尚彦(大学院生)、宮田耕充准教授
・産業技術総合bcゲーム 入金ボーナス所 材料・化学領域 極限機能材料bcゲーム 入金ボーナス部門 劉崢上級主任bcゲーム 入金ボーナス員
・筑波大学数理物質系物理学域 高燕林助教、丸山実那助教、岡田晋教授
・東北大学材料科学高等bcゲーム 入金ボーナス所(WPI-AIMR)/大学院工学bcゲーム 入金ボーナス科電子工学専攻 中條博史bcゲーム 入金ボーナス員、青木颯馬(大学院生)、加藤俊顕准教授
・名古屋大学工学bcゲーム 入金ボーナス科電子工学専攻 本田航大(大学院生)
・名古屋大学工学bcゲーム 入金ボーナス科電子工学専攻/金沢大学ナノ生命科学bcゲーム 入金ボーナス所(WPI-NanoLSI) 高橋康史教授
・北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアル・デバイスbcゲーム 入金ボーナス領域 麻生浩平助教、陳桐民bcゲーム 入金ボーナス員、大島義文教授、高村由起子教授
2 ポイント
・遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)のシートを安定したbcゲーム 入金ボーナスで巻物(スクロール)にする新たな手法を開発。
・TMDの上部と下部の組成を変えた「ヤヌスbcゲーム 入金ボーナス」が、スクロール化を促進することを発見。
・TMDの曲率や結晶の対称性などの制御を通じた触媒や光電変換機能の高性能化が期待。
3 bcゲーム 入金ボーナスの背景
近年、ナノチューブと呼ばれるナノサイズの円筒状物質は、その特徴的なbcゲーム 入金ボーナスに由来する物性、そして触媒や太陽電池等の光電変換デバイス等への応用について世界中で盛んに研究が行われています。一般に、ナノチューブは、厚みが1原子から数原子程度の極薄の二次元的なシートbcゲーム 入金ボーナスを円筒状に丸めたbcゲーム 入金ボーナスを持つナノ物質であり、代表的な物質として、炭素の単原子層であるグラフェンを丸めたカーボンナノチューブが知られています。また、遷移金属原子がカルコゲン原子に挟まれたbcゲーム 入金ボーナスを持つ遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)についても、二次元シートやナノチューブbcゲーム 入金ボーナスが存在します。最近では、TMDのナノチューブが同軸状に重なった多層TMDナノチューブにおいて、その巻き方に起因する超伝導や光起電力効果を示すことが報告されました。一方、このような多層TMDナノチューブは、様々な直径や巻き方などを持つナノチューブが同軸状に重なっているため、その結晶bcゲーム 入金ボーナスの同定は困難となります。その電気的・光学的性質とbcゲーム 入金ボーナスの相関を明らかにするには、ナノチューブの巻き方を制御することが重要な課題となっていました。
このような課題の解決に向け、これまで主に二つのアプローチが報告されてきました。一つは、多層TMDナノチューブとは別に、構造の同定が容易な単層TMDナノチューブに着目したものです。特に、カーボンナノチューブ等をテンbcゲーム 入金ボーナスートに用いた同軸成長により、単層TMDナノチューブを成長させることができます。本研究チームの中西勇介助教、宮田耕充准教授らは、これまで絶縁体のBNナノチューブの外壁をテンbcゲーム 入金ボーナスートに用いたMoS2(二硫化モリブデン)の単層ナノチューブ(https://www.tmu.ac.jp/news/topics/35021.html)や、様々な組成のTMDナノチューブ(https://www.tmu.ac.jp/news/topics/36072.html)の合成に成功してきました。しかし、同軸成長法では、得られるTMDナノチューブの長さが多くの場合は100 nm以下と短く、物性や応用研究には更なる合成法の改善が必要となっています。もう一つのアプローチとして、単結晶性の単層のTMDシートを巻き取り、各層の結晶方位が揃ったスクロールbcゲーム 入金ボーナスにする手法も知られていました。一般にマイクロメートルサイズの長尺なbcゲーム 入金ボーナスが得られますが、TMDシートを曲げた場合、遷移金属原子を挟むカルコゲン原子の距離が伸び縮みするため、bcゲーム 入金ボーナス的には不安定となります。そのため、得られるスクロールbcゲーム 入金ボーナスも内径が大きくなり、また円筒bcゲーム 入金ボーナスではなく平坦なbcゲーム 入金ボーナスになりやすいなどの課題がありました。
4 bcゲーム 入金ボーナスの詳細
本研究では、長尺かつ微小な内径を持つスクロールbcゲーム 入金ボーナスの作製に向け、上部と下部のカルコゲン原子の種類を変えたヤヌスbcゲーム 入金ボーナスと呼ばれるTMDに着目しました。このヤヌスTMDでは、上下のカルコゲン原子と遷移金属原子の距離が変わることで、曲がったbcゲーム 入金ボーナスが安定化することが期待できます。このようなヤヌスTMDを作製するために、研究チームは、最初に化学気相成長法(CVD法)(注2)を利用し、二セレン化モリブデン(MoSe2)および二セレン化タングステン(WSe2)の単結晶性の単層シートをシリコン基板上に合成しました。この単層シートに対し、水素雰囲気でのプラズマ処理により、単層TMDの上部のセレン原子を硫黄原子に置換し、単層ヤヌスTMDを作製できます。次に、有機溶媒をこの単層ヤヌスTMDに滴下することで、シートの端が基板から剥がれ、マイクロメートル長のスクロールbcゲーム 入金ボーナスを形成しました(図1)。
図1 単層ヤヌスMoSSeを利用したナノスクロールの作製手法。
(a)単層MoSe2のbcゲーム 入金ボーナスモデル。(b)熱CVDシステムの概略図。(c)単層ヤヌスMoSSeのbcゲーム 入金ボーナスモデル。(d)水素プラズマによる硫化プロセスの概略図。(e)ヤヌスナノスクロールのbcゲーム 入金ボーナスモデル。(f)有機溶媒の滴下によるナノスクロールの作製方法の概略図。
※原論文「Nanoscrolls of Janus Monolayer Transition Metal Dichalcogenides」の図を引用・改変したものを使用しています。
この試料を電子顕微鏡で詳細に観察し、実際にスクロールbcゲーム 入金ボーナスを形成したこと(図2)、全ての層が同一の方位を持つこと、そして最小内径で5 nm程度まで細くなることなどを確認しました。
観察された内径に関しては、ヤヌスTMDのナノチューブでは最小で直径が5 nm程度までは、フラットなシート構造よりも安定化するという理論計算とも一致します。また、このbcゲーム 入金ボーナス、軸に平行な偏光を持つ光を照射したときに発光や光散乱の強度が増大すること、表面の電気的な特性がセレン原子側と硫黄原子側で異なること、およびスクロール構造が水素発生特性を有することも明らかにしました。
図2 ナノスクロールの電子顕微鏡写真。
※原論文「Nanoscrolls of Janus Monolayer Transition Metal Dichalcogenides」の図を引用・改変したものを使用しています。
5 bcゲーム 入金ボーナスの意義と波及効果
今回得られた研究成果は、平坦な二次元シート材料を円筒状のスクロールbcゲーム 入金ボーナスに変形する新たな手法を提案するものです。特に、非対称なヤヌスbcゲーム 入金ボーナスの利用は、様々な二次元シート材料のスクロール化に適用することができます。また、単結晶のTMDを原料に利用することで、スクロール内部の層の結晶方位を光学顕微鏡による観察で容易に同定すること、そして様々な巻き方を持つスクロールの作製が可能になりました。今後、本研究成果より、様々な組成やbcゲーム 入金ボーナスを持つスクロールの実現、電気伝導や光学応答と巻き方の関係の解明、触媒やデバイス応用など、幅広い分野での研究の展開が期待されます。
用語解説
(注1)遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)
タングステンやモリブデンなどの遷移金属原子と、硫黄やセレンなどのカルコゲン原子で構成される層状物質。遷移金属とカルコゲンが1:2の比率で含まれ、組成はMX2と表される。単層は図1aのように遷移金属とカルコゲン原子が共有結合で結ばれ、3原子厚のシートbcゲーム 入金ボーナスを持つ。近年、TMDが持つ優れた半導体特性により大きな注目を集めている。
(注2)化学気相成長法(CVD法)
原料となる材料を気化させて基板上に供給することにより、薄膜や細線を成長させる合成技術。
発表論文
(タイトル)Nanoscrolls of Janus Monolayer Transition Metal Dichalcogenides
(著者名)Masahiko Kaneda, Wenjin Zhang, Zheng Liu, Yanlin Gao, Mina Maruyama, Yusuke Nakanishi, Hiroshi Nakajo, Soma Aoki, Kota Honda, Tomoya Ogawa, Kazuki Hashimoto, Takahiko Endo, Kohei Aso, Tongmin Chen, Yoshifumi Oshima, Yukiko Yamada-Takamura, Yasufumi Takahashi, Susumu Okada, Toshiaki Kato*, and Yasumitsu Miyata*
*Corresponding author
(雑誌名)ACS Nano
(DOI)https://doi.org/10.1021/acsnano.3c05681
本bcゲーム 入金ボーナスの一部は、日本学術振興会 科学bcゲーム 入金ボーナス費助成事業「JP21H05232, JP21H05233, JP21H05234, JP21H05236, JP21H05237, JP22H00283, JP22H00280, JP22H04957, JP21K14484, JP20K22323, JP20H00316, JP20H02080, JP20K05253, JP20H05664, JP21K14498, JP21K04826, JP21H02037, JP22H05459, JP22KJ2561, JP22H05445,JP23K13635,JP22H05441,JP23H00097,JP23K17756, JP23H01087」、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業「JPMXP1222JI0015」、創発的bcゲーム 入金ボーナス支援事業FOREST「JPMJFR213X and JPMJFR223H」、戦略的創造bcゲーム 入金ボーナス推進事業さきがけ「JPMJPR23H5」、矢崎科学技術振興記念財団、三菱財団、村田学術振興財団および東北大学電気通信bcゲーム 入金ボーナス所共同プロジェクトbcゲーム 入金ボーナスの支援を受けて行われました。