「透明度」「電気伝導度」「柔軟性」に優れる多点マイクロbcゲーム 本人確認搭載
コンタクトレンズを開発 網膜の局所的応答測定に成功し緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価へ期待
今後事業化に向けた臨床試験へ
詳細は早稲田大学HPをご確認ください。
発表のポイント ●市販のコンタクトレンズに搭載可能な、小さく透明で柔らかい複合マイクロメッシュbcゲーム 本人確認を実現 ● 本研究グループがこれまでに開発した導電性高分子を用いたbcゲーム 本人確認技術により実際に市販のコンタクトレンズへの貼付、および局所的に絶縁することに成功 ● これにより、網膜の局所的な応答を計測する複数点同時網膜電位計測が可能 ● 本成果は、緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価につながります |
早稲田大学大学院情報生産システム研究科の三宅丈雄(みやけたけお)教授・アザハリ・サマン助教の研究グループと山口大学大学院医学系研究科眼科学講座の木村和博(きむらかずひろ)教授・芦森温茂(あしもりあつしげ)助教らの研究グループは、市販のコンタクトレンズに搭載可能な、小さく透明で柔らかい多点マイクロbcゲーム 本人確認を開発し、これまで技術的な課題のあった網膜の局所的な応答を測定することが可能となることを確かめました。これは、半導体微細加工技術によって、実用にも耐えうる82%以上の光透過性を持ち、かつ、微小な電位を計測可能な複合マイクロメッシュbcゲーム 本人確認(導電性高分子と金の複合化)です。さらに、市販のコンタクトレンズに本マイクロbcゲーム 本人確認を貼り付け、網膜電図(ERG)計測に用いる以外のリード線を絶縁化することにも成功しました。開発したbcゲーム 本人確認は、角膜上皮細胞を用いて95%以上の生存率を実現できること、また、家兎試験によって市販のERGbcゲーム 本人確認と同等の性能を有することを確認しました。さらに、アレイ化された7マイクロbcゲーム 本人確認でERGを多点計測できることを確かめました。これら成果は、緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価などにつながります。
以上は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、キヤノン財団の助成による成果であり、2024年5月6日にWileyの科学誌「Advanced Materials Technologies」にオンbcゲーム 本人確認ン版で公開されました。
図1. 透明で柔らかいマイクロbcゲーム 本人確認による多bcゲーム 本人確認網膜電位計測システム
(1) これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
網膜電図(ERG,Electroretinogram)※1は、光刺激に応答する網膜(視神経細胞が刺激される)から発生する電位を角膜上のセンサbcゲーム 本人確認で測定します。一般的には、網膜変性疾患の検査で利用されることが多く、基礎研究から臨床的な応用まで幅広く利用されています。
ERG測定には、電気化学計測(ポテンショスタットなど)と同様、検出bcゲーム 本人確認(間bcゲーム 本人確認)、参照bcゲーム 本人確認(不間bcゲーム 本人確認)、接地bcゲーム 本人確認からなる3bcゲーム 本人確認システムが必要です。検出bcゲーム 本人確認は角膜または結膜に、参照bcゲーム 本人確認は測定器のグランドに相当し、接地bcゲーム 本人確認は耳たぶなどに接触させます(図2参照)。歴史的には、角膜上で計測するタイプと結膜周辺(リングやフックタイプのワイヤーbcゲーム 本人確認)で検出する2種類のタイプが存在しますが、現在では角膜上で測るタイプが主流となっており、実用性や安全性の観点でレンズ形状に加工された硬質なプラスチック上に金属が配線された製品が市販されています。これら一般的な1bcゲーム 本人確認によるERG計測は、学術的には全視野網膜電図(FF-ERG, full field electroretinogram)と言い、網膜の局所的な応答を取得することができないなどの課題を有していました。局所的な応答(=空間的な差異を調べる)を測定する方法として、多局所網膜電図(MF-ERG, multifocal electroretinogram)や多bcゲーム 本人確認網膜電図(ME-ERG, multi-electrode electroretinogram)があります。MF-ERGは、光を網膜の特定の位置に照射し、その際のERGを単一bcゲーム 本人確認で計測する手法となるため、高解像度でスキャン可能な光刺激装置が必要となります。一方、ME-ERGは、FF-ERGと同等の光照射システムが利用できますが、bcゲーム 本人確認を多点配置して測定することが必要となるため、bcゲーム 本人確認およびレンズ全体の透明性および加工技術などの高度化に課題を有していました。
(2) 今回の研究で実現したこと
このような背景の中、本研究グループは、半導体微細加工技術と電気メッキ技術を組み合わせることで透明度、電気伝導度、柔軟性に優れるメッシュbcゲーム 本人確認を作製し、ERG計測可能な多bcゲーム 本人確認化、市販のコンタクトレンズ上への接合および局所的絶縁化に成功しました(図2)。また、安全性に関しては、角膜上皮細胞による細胞生死判定および家兎を用いた多bcゲーム 本人確認ERG計測および評価にも成功しました。
図2.本研究で実現された主な成果
(3) そのために新しく開発した手法とその性能
透明で柔らかい金属bcゲーム 本人確認を作製するために、形状(Serpentine, square, zigzag, hexagon:図2左参照)、幅(5, 7, 9μm)およびユニット幅(200, 500, 1000 μm)を変えたマイクロメッシュbcゲーム 本人確認を作製し、透過性および10%歪を加えた際の抵抗値変化を評価しました(図3)。ここで用いた金属は、電気メッキで作製された金となります。透明性に関しては、すべてのマイクロメッシュbcゲーム 本人確認において、80%以上の透過性を示しましたが、10%歪においては、Serpentineとhexagonのみ歪に耐えうることを確認しました。ソフトコンタクトレンズを用いた場合、眼圧などの変化によってレンズに~3%程度の歪が生じるため、検出bcゲーム 本人確認の伸縮性が求められます。また、開発したメッシュbcゲーム 本人確認は市販のコンタクトレンズ上に貼り付け、レンズ表面に作製し、角膜とコンタクトする必要があるため、本研究グループがこれまでに用いてきた導電性高分子を用いたbcゲーム 本人確認技術を用いました(Advanced Materials Technologies, 4, 1800671, 2019.)。従って、金マイクロメッシュ上にPEDOT導電性高分子が被覆された構造となります。複合化されたマイクロメッシュbcゲーム 本人確認においても、80%以上の透過性を有することは確認済みです。
図3. 複合マイクロメッシュbcゲーム 本人確認性能評価(ここでは、bcゲーム 本人確認は1本のみ。上図:電圧印加後のメッシュbcゲーム 本人確認および配線bcゲーム 本人確認のインピーダンス結果、中図:電圧印加による絶縁化概要図、下図:各bcゲーム 本人確認部位における出力電圧測定)
次に、このマイクロメッシュbcゲーム 本人確認から計測に繋げるリードbcゲーム 本人確認の絶縁をどうするかという課題が、最終的なターゲットである多点bcゲーム 本人確認によるERG計測で必須となることがわかりました。そこで、本研究グループは、メッシュbcゲーム 本人確認の導電性高分子のみの導電性を維持する方法として(すなわち、リード線に被覆された導電性高分子を絶縁化する方法)、bcゲーム 本人確認全体の両端に直流電流を印加することで、リード線に流れる電流(図3におけるI1)と金マイクロメッシュ上に新たに流れる電流値(図3におけるI2)をbcゲーム 本人確認構造で制御できることに気づき、COMSOL※2を用いた計算機シミュレーションと実験的に確かめました。シミュレーションの結果より電流密度として約70倍以上の電流値の差があることを確かめ、実験的にリード線上の導電性高分子のみが過酸化されること、また、フーリエ変換赤外線分光法による分子振動解析で導電性高分子の構造変化を確かめました。さらに、通電試験を実施したところ、マイクロメッシュbcゲーム 本人確認を介してのみ電圧が計測されることを確かめました。
開発した複合化マイクロメッシュbcゲーム 本人確認の生物学的安全性と動物試験によるERG計測bcゲーム 本人確認としての性能を評価しました(図4)。ヒト由来の角膜上皮細胞(HCEC)を用いて、各マイクロメッシュbcゲーム 本人確認(Au, Au/PEDOT, Zn)上での細胞生存率を求め、その結果AuとAu/PEDOTbcゲーム 本人確認上では90%以上の高い生存率を保つのに対し、Znbcゲーム 本人確認上では金属イオンのリークにより生存率が50%以下まで低下することが明らかになりました。従って、電気メッキで作製したAu/PEDOT複合bcゲーム 本人確認は、十分な安全性を有していると言えます。さらに、本複合マイクロメッシュbcゲーム 本人確認をアレイ化(7bcゲーム 本人確認)した多bcゲーム 本人確認レンズを試作し、家兎の眼に装着させて各bcゲーム 本人確認からERGが計測できることを確認しました。本研究で開発したメッシュbcゲーム 本人確認から取得した網膜電位信号は、市販のERGbcゲーム 本人確認と同等の性能を有していることを確認しています。
図4. 安全性および多点bcゲーム 本人確認ERG計測評価(上図:各bcゲーム 本人確認における細胞生存率評価と蛍光顕微鏡評価、下図:家兎を用いたME-ERG計測結果)
(4) 今後の展望
今後は、事業化に向け、本計測レンズを用いて臨床試験に取り組みます。また、本プロジェクトにご興味のある企業からのお問い合わせをお待ちします。
(5) 用語解説
※1 網膜電図:
可視光を照射した際に,網膜から発生する電位の変化を記録します。これによって、網膜が正常に働いているかどうかを診断することができます。
※2 COMSOL:
有限要素法を基盤とするシミュレーションソフトウェア。基本的工学分野から様々な応用分野における計算機シミュレーションを実現することができます。
(6) 論文情報
雑誌名:Advanced Materials Technologies
論文名:Multi-electrode Electroretinography with Transparent Microelectrodes Printed on a Soft and Wet Contact Lens
執筆者名:Lunjie Hu, Saman Azhari, Qianyu Li, Hanzhe Zhang, Atsushige Ashimori, Kazuhiro Kimura, and Takeo Miyake
掲載日(現地時間):2024年5月7日
掲載URL:https://doi.org/10.1002/admt.202400075
DOI:10.1002/admt.202400075
(7) 研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)
日本医療研究開発機構医療機器等研究成果展開事業(開発実践タイプ),JP23hma322020
キヤノン財団研究助成