ポイント
・ 昼夜の湿度変化を利用した「bcゲーム ボーナス 賭け条件」で電子回路を駆動できるまでに出力が向上
・ 暗所でも安定的に供給できるクリーン電源として、実用化に向けて前進
・ bcゲーム ボーナス 賭け条件を導出し、準静的サイクルでは効率100%の発電ができることを理論的に明らかに
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)人間拡張研究センター 駒﨑友亮 主任研究員、延島大樹 主任研究員、平間宏忠 主任研究員、センシングシステム研究センター 渡邉雄一 主任研究員、末森浩司 主任研究員、植村聖 研究センター長は、電子回路を駆動できるまでに出力を向上させたbcゲーム ボーナス 賭け条件を開発し、湿度変化を利用した発電で4カ月以上の長期にわたってワイヤレスセンサーを駆動させることに、世界で初めて成功しました。
bcゲーム ボーナス 賭け条件は昼夜の湿度変化を利用して発電を行うため、湿度が一定の環境を除けば、場所を選ばず発電が可能で、新たな環境bcゲーム ボーナス 賭け条件技術として小型のワイヤレスセンサーなどの電源への活用が期待されます。これまでは、発電出力が低く、電子回路を駆動できるほどではありませんでした。しかし、今回セラミック固体電解質膜を用いて出力を改善し、4カ月以上にわたって小型のワイヤレスセンサーを駆動することに成功しました。これにより、橋の下や機械の制御盤の中など、太陽bcゲーム ボーナス 賭け条件の使えない暗所でも、bcゲーム ボーナス 賭け条件交換不要でメンテナンスフリーのワイヤレスセンサーを使用できるようになると期待されます。
また、湿度変化を利用した発電の熱力学理論を導出し、bcゲーム ボーナス 賭け条件、準静的サイクルでは効率100%の発電ができることを理論的に明らかにしました。この理論を活用して、bcゲーム ボーナス 賭け条件の高性能化に向けた研究の発展が期待できます。
なお、この研究成果の詳細は、2025年1月21日(中央ヨーロッパ標準時)に「Advanced Energy & Sustainability Research」に掲載されました。また、2025年1月29~31日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される展示会「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2025」で発表されます。
下線部は【用語解説】参照
※本bcゲーム ボーナス 賭け条件では、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ
( https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250122/pr20250122.html)をご覧ください。
開発の社会的背景
インフラ保全や農業などの分野では、IoT技術やセンサーを使ったモニタリングによるスマート化に期待が寄せられていますが、現場に設置するセンサーの電源の確保が課題でした。乾電池などは定期的に交換が必要であり、太陽電池は暗所に向きません。その点、bcゲーム ボーナス 賭け条件は昼夜の湿度変化を利用して発電を行うため、あまり場所を選ばず発電が可能で、小型のワイヤレスセンサーなどの電源として活用が期待されています。
研究の経緯
産総研は、潮解性の無機塩水溶液の吸湿作用と塩分濃度差発電の技術を組み合わせることで、bcゲーム ボーナス 賭け条件化によって発電を行うデバイスの開発を行ってきました(2021年6月2日 産総研bcゲーム ボーナス 賭け条件発表)。
これまで開発したbcゲーム ボーナス 賭け条件では、内部に用いているポリマー系陽イオン交換膜の水分透過性に起因する自己放電によって、湿度変化から得られた多くのエネルギーが無駄になっていました。そのため、発電で得られる電力も小さく、電子回路の駆動は困難でした。そこで、水分を透過させないセラミック固体電解質膜を利用して自己放電を完全になくすことで、高出力なbcゲーム ボーナス 賭け条件を開発しました。
また、湿度変化を利用した発電の熱力学理論はこれまで確立されておらず、特定の湿度変化を与えた際、bcゲーム ボーナス 賭け条件から取り出し可能な最大エネルギーや理論上の最大発電効率は不明でした。今回の研究では、bcゲーム ボーナス 賭け条件の出力の向上に加えて、理論の導出とその実証を行いました。
なお、本研究開発は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)のNEDO先導研究プbcゲーム ボーナス 賭け条件ラム/未踏チャレンジ2050事業「湿度変動発電素子の研究開発」(2019~2023年度)による支援を受けています。
研究の内容
全固体電池などで用いられるリチウムイオン伝導性セラミック固体電解質膜を用いて、bcゲーム ボーナス 賭け条件の性能を大幅に向上させました。bcゲーム ボーナス 賭け条件は、空気の湿度変化を利用して発電を行う発電素子です。大気に開放された部屋(開放槽)と密閉された部屋(閉鎖槽)に強い吸湿性を持つ電解液(塩化リチウム水溶液)と電極が収納されており、開放槽と閉鎖槽の間は陽イオン交換膜で仕切られています。周囲の湿度が変化すると、開放槽内の電解液から水が蒸発、または電解液が空気中の水蒸気を吸収して濃度が変化します。閉鎖槽は密閉されているため湿度変化による電解液の濃度変化は起こらず、開放槽と閉鎖槽の間で濃度差が発生して電極間に電圧が発生します。これまでは陽イオン交換膜としてポリマー系の膜を用いていました。ポリマー系陽イオン交換膜は陽イオンに加えて水分も透過させるため、湿度変化によって電池内部に電解液の濃度差が発生しても、浸透圧によって水分が移動し、濃度差を減少させていました。bcゲーム ボーナス 賭け条件の電圧は濃度差によって発生するため、濃度差の減少は電圧の減少につながります。放電させなくても電圧が減少するので、この現象は自己放電と呼ばれます。従来のbcゲーム ボーナス 賭け条件では、自己放電によって多くのエネルギーが無駄になっていることがこれまでの研究でわかっていました。
今回の研究の特徴は、従来のポリマー系陽イオン交換膜に代わって、水分を全く透過させないリチウムイオン伝導性セラミック固体電解質膜を用いたことです。これにより、自己放電がなくなり、従来よりも高出力の発電が可能となります。図1に開発したbcゲーム ボーナス 賭け条件の構造と写真を示します。大きさはW35×D35×H5 mmで、内部の隔膜として厚さ20 µmのガラスセラミック電解質膜(株式会社オハラ製 LICGC™ SP-01)を用いています。
図2(a)は、実験環境において湿度90%で完全に放電させた後、湿度を30%に下げた際の湿度変動電池の最大出力を測定した結果です。最大出力は2.5 mWであり、膜の面積あたりの出力密度は436 µW cm−2でした。これは、従来のポリマー系陽イオン交換膜を用いた場合に得られていた出力密度(6.4 µW cm−2)の68倍に相当し、大幅な出力向上を実現しました。図2(b)は、この湿度変動電池を屋外に設置して出力を継続的に計測した結果です。昼夜の湿度変化により、3カ月以上の発電が可能であることが確認され、期間中の最大出力は348 µW(60.4 µW cm−2)、平均出力は17.5 µW(3.0µWcm−2)でした。この平均出力は、ワイヤレスセンサーなどの省電力な電子回路を駆動させることが可能な値です。bcゲーム ボーナス 賭け条件、実環境でも十分な発電性能を有しています。
bcゲーム ボーナス 賭け条件による電子回路の駆動を実証するため、bcゲーム ボーナス 賭け条件を電源とするワイヤレスセンサーを開発しました(図3(a))。このワイヤレスセンサーは、二つのbcゲーム ボーナス 賭け条件で生じた電圧をDC-DCコンバーターによって昇圧して、小型のリチウムイオン電池(容量0.8 mAh)に蓄電します。リチウムイオン電池に蓄電された電気を使って、気温、湿度、気圧を計測するセンサーと無線通信用の集積回路を10分間隔で動作させ、センサーの計測データとリチウムイオン電池の電圧のデータを無線送信します。蓄電用のリチウムイオン電池を搭載しているため、bcゲーム ボーナス 賭け条件が発電していない時間帯にも継続して動作が可能です。このワイヤレスセンサーを屋外に設置して実証実験を行いました(図3(b))。この実証実験では、4カ月以上にわたってワイヤレスセンサーのデータを送信し続けることができました(図3(c))。実験開始当初は約2.5 Vだったリチウムイオン電池の電圧は、10日程度で満充電(2.8V)まで増加し、その後も2カ月間にわたり満充電に近い電圧を維持できました。その後は徐々にリチウムイオン電池の電圧が低下していますが、これはbcゲーム ボーナス 賭け条件の劣化による発電量の低下に起因していると推測されます。bcゲーム ボーナス 賭け条件が全く発電していない状態でワイヤレスセンサーを動かすと、リチウムイオン電池の電圧は2.8 Vから2.0Vまで約25日間で低下します。そのため、満充電を維持できなくなってからもbcゲーム ボーナス 賭け条件の発電で電力が供給され、リチウムイオン電池の電圧低下が遅くなったことで長期間の駆動が実現できたと考えられます。湿度変化を利用した発電で4カ月以上も電子回路を駆動させた例はこれまで報告されておらず、今回の実証実験が世界初となります。
開発した自己放電のないbcゲーム ボーナス 賭け条件を対象に、これまで明らかになっていなかった湿度変化を利用した発電についての熱力学理論の導出も行いました。この熱力学理論では、湿度発電サイクルを図示するV-Q線図(電圧-電荷線図)、µ-n線図(化学ポテンシャル-吸湿量線図)を考案し、特定の湿度変化を与えた際にbcゲーム ボーナス 賭け条件を用いて取り出し可能な最大エネルギーや理論上の最大発電効率の計算を可能にしました。これにより、開発した自己放電のないbcゲーム ボーナス 賭け条件は、準静的サイクルでは発電効率が100%となる優れた発電手法であることが明らかになりました。実験により、与える湿度変化を遅くして準静的サイクルに近づくほど発電効率が向上することを確認しています。96時間周期の非常にゆっくりとした湿度変化を与えることで60%の発電効率が得られました(図4)。
今回の研究では、電子回路を駆動可能にする高出力のbcゲーム ボーナス 賭け条件を開発するとともに、bcゲーム ボーナス 賭け条件の熱力学理論を導出しました。これにより、小型の自立電源としてのbcゲーム ボーナス 賭け条件の可能性を示すとともに、湿度を利用した発電に対する学術的理解を深めることができました。
今後の予定
今回開発した技術と熱力学理論を活用し、さらなる高出力化に向けた研究開発を行います。bcゲーム ボーナス 賭け条件を実用化するためには、耐久性を向上させて、一次電池よりも長い10~20年以上の寿命を持たせる必要があり、その実現のための研究開発も進めます。
論文情報
掲載誌:Advanced Energy & Sustainability Research
論文タイトル:Hygroelectric Energy Harvesting by Daily Humidity Cycles and Its Thermodynamics
著者:Yusuke Komazaki, Taiki Nobeshima, Hirotada Hirama, Yuichi Watanabe, Kouji Suemori and Sei Uemura
DOI:https://doi.org/10.1002/aesr.202400342
展示会情報
展示会名称:MEMS センシング&ネットワークシステム展 2025
日程:2025年1月29日~1月31日
会場:東京ビッグサイト
URL:https://www.optojapan.jp/mems/ja/
ブース番号:5D-11
用語解説
環境bcゲーム ボーナス 賭け条件
環境中に存在する微小なエネルギーを用いて発電を行う技術。IoTやセンシング用途において、電源配線や一次bcゲーム ボーナス 賭け条件に頼らない自立電源を実現する技術として期待される。エネルギーハーベスティングとも呼ばれる。
準静的サイクル
熱力学的平衡状態を保ったまま行われるサイクル。ここでは、bcゲーム ボーナス 賭け条件内部の電解液と空気中の水蒸気の気液平衡を保ったままゆっくりと湿度を変化させるサイクルを指す。
DC-DCコンバーター
直流電圧を別の値の直流電圧に変換する電源回路。
bcゲーム ボーナス 賭け条件URL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250122/pr20250122.html